愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
「はい!」と元気に答えた次の瞬間、私は驚きに目を見開いた。

ブランド店の紙袋と通勤鞄を足元の石畳に置いた彼が、左腕で私の腰を強く引き寄せたのだ。

右手は私の後ろ髪に潜り込み、私が逃げないようにと頭を固定する。

彼の瞳に蠱惑的な色が灯されるのを見ると同時に、唇が重なった。

優しく押し当てられた彼の唇は、私の唇の感触を楽しむかのようにゆっくりと左右に動き、数秒して離される。

拘束も解かれ、半歩の距離を置いて向かい合う彼は嬉しそうな笑みを浮かべているが、すぐに戸惑いの表情に変わる。

「有紀子……?」と心配そうに問いかけられた。


私は頭の中が真っ白になり、呼吸することも忘れて呆然と彼を見つめている。

もしかすると、鼓動まで止まっているかもしれない。


今のは、キス、だよね……?

どうしよう……恥ずかしくてたまらない!


頭が働き始めると、顔から火が出そうに熱くなる。

その後には、お風呂でのぼせたように体がふらつき、足から力が抜けていった。

腰砕けで崩れ落ちそうになった私を、桐島さんが両腕で支えて慌てている。


「すまない! 不意打ちのキスは君への負担が大きすぎた。次は言ってからにするよ」


『そうしてください……』と心の中で呟いた私は、『キスしよう』と言われて目を閉じる自分を想像する。

すると、それも私にはかなり刺激的で、動悸はさらに激しさを増してしまった。

いつかは恋人として彼と結ばれたいという思いはあるけれど、この調子ではいつになるのか。

あまり長い先ではありませんように……と、彼のスーツにしがみつきながら願っていた。

< 168 / 258 >

この作品をシェア

pagetop