愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
ひと通り眺めてから、桐島さんの大事なコレクションを傷つけないよう注意を払い、ハンドモップで慎重にほこりを払っていった。

すると、ふと、一体のこけしと目が合う。

肩までの黒髪に、控えめでつぶらな瞳をして、頬は赤く、おちょぼ口な少女のこけしである。

その顔は私と似ている気がして、掃除の手を止めじっと見入った。


桐島さんは、よく私のことを可愛いと褒めてくれるけど、それはお世辞でも気遣いでもなく、どうやら彼の本心のようだ。

この部屋を見てわかるように、彼が収集したくなるほどに好み、可愛いと思うものはこけしなのだから。


その気づきにクスクスとひとり笑いをして、地味な顔立ちに生まれたことを感謝していた。

大勢に美人だと評価されるより、私は愛するたったひとりの男性に可愛いと思われたい……。

ところが。


それから五時間ほどが経ち、私はにわかに信じがたい事態に陥っていた。

ここは営業部の向かいにある、小会議室。

今はお昼休み時間に入ったところで、自分で作ったお弁当を自席で食べていた私を内線電話で呼び出したのは、広報部の男性社員である。


彼の名前は一本気(いっぽんぎ)さん。

二十八歳で、男らしく整った顔立ちをしており、女性社員に人気があるという噂をチラリと耳にしたことがあった。
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