愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
「付き合ってる人、いないの?」

「私は、ええと……」


桐島さんの名前をここでは出せないので、どう話そうかと言い淀んでいたら、恋人はいないと受け取られてしまう。

スマホを操作する彼女が、「梶原先輩の友達、紹介してあげるよ。見た目は彼の引き立て役って感じなんだけど、真面目で割といい会社に勤めてる。有紀と合いそう」と言い出した。

「向こうの予定、聞いてみるね」と、私とその人を引き合せようとするから、慌てて止めた。


「私にも恋人がいるの!」


椅子から腰を浮かしてそう言えば、声が少々大きくなってしまったため、周囲の数人の視線がこちらに向いた。

「す、すみません……」と顔を熱くして座り直し、小柄な体をさらに小さくする。

迷惑そうな視線からはすぐに解放されたが、ホッとすることはできず、亜美ちゃんに困らされる。


「彼氏いるんだ。勘違いしてごめん。どんな人?」


店員に聞かれる心配をして、落ち着きなく店内に視線を配りつつ、「会社の人……」と私は小声で答えた。


「部署が同じなの?」

「違うよ」

「いつから付き合ってるの?」


次々と質問をぶつけられて、心の中で勘弁してほしいと思いながら、人物が特定されない程度の返事をする。

年齢を問われて「三十代」と言葉少なに答えたら、亜美ちゃんが小さなため息をついてから、真面目な顔をして諭すように言った。

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