愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
もう泣かないと決めたのに、私の涙腺がまた緩みかけ、慌てて弟に背を向けて、台所へと歩きだした。


「夕食の支度を始めようかな。下宿屋なのに五日もさぼっちゃって、皆さんに申し訳ないよね。お詫びに今夜は美味しいものをたくさん作らないと……」


着替えもせずに台所に逃げ込み、流し台の縁に両手をついて、涙が溢れないようにこらえていた。

けれども、ここに逃げたのは間違いであったみたい。

まな板や包丁、大鍋やぬか漬けの樽、ここにあるもの全てに祖母の思い出が染みついていて、ふたりで並んで料理していた毎日を羨ましく振り返ってしまう。


「おばあちゃん、そばにいてよ……」


呻くように本音を呟いたら、涙がひと粒ポタリと、流し台に落ちた。



四十九日の法要と納骨も済んだ九月の中旬。

必死に働く私の毎日は、祖母の死を悲しんでいる暇もないほどであった。

それでも、紫陽花荘をひとりで切り盛りしていけるだろうかという不安は減り、やっていけるという自信が膨らんでいる。

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