愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
台所に入ろうと廊下を進んでいたら、その手前にある階段から縦縞しじらの浴衣を着た、見目好い男性がひとり、降りてきた。

一階に降り立った彼と向かい合い、「桐島(きりしま)さん、おはようございます。皆さん、先に召し上がってますよ」と笑顔で声をかけた。

すると、「有紀ちゃん、おはよう」と親しげに挨拶を返してくれた彼は、自嘲気味に笑う。


「寝過ごしてしまった。顔を洗ったら、すぐに行きます」


浴衣の前合わせが緩く、張りのある大胸筋がチラリと見えている。

少々寝癖のついた短い前髪をかき上げる仕草に、私の鼓動が小さく跳ねた。


こういうのを、大人の色気というのかな……。


日本人離れした彫りの深い顔立ちをしているから、そう感じるのかもしれない。


彼は、シモン・ボルレー・桐島さん、三十四歳。

煤竹色の髪に白い肌、灰青色の瞳を持ち、身長は百八十五センチほどもあるだろうか。

私とは三十センチほど違う。


紫陽花荘の低い天井は彼には窮屈そうで、ドアの出入りの際には頭をかばって潜るようにしているから、古い建物で申し訳ないと感じる時もあった。

それでもこの下宿屋に四年も住み続けてくれるのは、浴衣を常用していることからもわかるように、和風テイストを好む外国人であるからなのだろう。

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