愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
アイスクリームのパッケージングチームのメンバーの顔が頭に浮かんでいた。

リーダーの田ノ上さんがせっかく褒めてくれたというのに、明日なったら、まだできていないのかと残念がらせてしまいそう。

なんとか元のイラストに近いものを完成させたとしても、私の作業が遅れたことで、チームの全員に迷惑をかけてしまう。

そうならないように、明日の十四時からのミーティングまでに、私がなんとかしなければ。

時間がないけれど……。


震える手で引いた汚い線を一度消して、指が白くなるほどにペンを強く握り、急いで慎重に描き直す。

そして、焦りの中で描き続けること、どれくらいの時間が過ぎたのか……。


この部屋の私の上だけは照明が煌々と灯されているが、ほとんどの社員が帰ったため、廊下の電気は照度を下げて薄暗くなっていた。

やっと線画の半分ほどを描いたところで、廊下に誰かの足音が聞こえて、ふと手を止めた。

私の場合、デジタル作画にはかなりの集中力が必要である。

足音に気づいたということは、集中が切れかけていたのだろう。

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