愛育同居～エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい～

私が振り向くのと同時に、誰かがドアから飛び込んできた。

「有紀ちゃん！」と緊迫した声で呼びかけたのは桐島さんで、私の横まで駆けてくる。


彼の髪とコートの肩は少々濡れている。

どうやら外は、雨が降っているらしい。

桐島さんにいつもの笑顔はなく、私の肩を片手で掴むようにして、低めの声で話しだす。


「メールにも電話にも応答がないから、社に戻ったんだ。今、二十一時二十分だよ。気づいてる？」

「あっ……」


データが消えてしまったのは、二十時の少し前だったように思う。

もうそんなに時間が経ったのかと、私は驚いていた。

スマホが鳴っていることにも気づかないほどに、心は焦りに支配されていたらしい。


ハッとした私は、帰宅した彼を会社に戻らせてしまったことに対して、「ごめんなさい！」と謝った。

そして、「夕食も作らないでーー」と謝罪の言葉を重ねようとしたが、彼が首を横に振ってそれを遮った。


「そんなことはいい。一体なにがあったのか、教えてください」