愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
私が無料で下宿させてもらえる条件は、食事の支度なのに、彼は責めずに心配してくれる。

その優しさと真剣な眼差しに、私の心が大きく波打った。

肩にのせられている大きな手に頼りがいを感じて、つい甘えたくなる。


桐島さんならきっと、助けてくれる……。


安堵の気持ちが広がったことで、私の涙腺が決壊し、溢れるように涙が流れた。

子供のようにしゃくりあげて泣きながら、突然データが消えてしまい、クラウドに保存しておいたバックアップも、USBメモリもなくなっていたという事情を彼に説明した。


「桐島さん、どうしたらいいですか? 描き直しても、急いでいるからか変になっちゃって。でも、もう時間がないんです。明日の十四時までに仕上げないと、チームの皆さんに迷惑をかけてしまう……」


すると、「大丈夫」と頼もしい声をかけられた。

桐島さんはスーツのポケットから和柄のハンカチを出して、それで私の涙を拭いてくれた。

クリアになった視界で見える彼は、ニッと口角をつり上げて、どことなく楽しそうな顔付きをしている。

それをなぜかと不思議に思っていたら、「有紀ちゃんのノートパソコンをここに持ってきて」と言われた。


「は、はい」

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