愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
彼は彫りが深く、精悍で整った顔立ちをしているが、どことなく日本らしさも感じられる。

きっと両親のどちらにも似ているのだろう。

ベルギーと日本の、いいとこ取りで生まれてきたのではないだろうか……。


桐島さんに迷惑をかけている状況なのに、私はつい見惚れてしまった。

私の中から不安や焦りが消えているのは、彼が頼もしく、データを復活させると言ってくれたことと、楽しそうにその作業をしているせいであろう。


少年のように生き生きとした目をする桐島さんをこれまでに見たことはなく、彼の新しい一面を発見した気分で、嬉しく思っていた。


胸がこんなにも高鳴るのは、どうしてかな……。


その作業は、ほんの十分ほどで終了した。

「できたよ」と言われて私は立ち上がり、デスクトップのパソコン画面を覗き込む。

するとそこには、二十時少し前に、私が席を離れた時点の紫陽花のイラストが、見事に復活していた。


深い安堵の息をついて、隣に座る彼に「ありがとうございます」と心からのお礼を伝える。

それに対してニコリと微笑んで頷いてくれた彼だけど、その直後に眉間に皺を刻み、不機嫌そうな声色で言った。


「さて、次は犯人捜しをしなければ」

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