つなげば星座になるように
*★*―――*★*


「よろこべ、部員。我がサークルのミニコン(ミニコンサート)に、王子がピアノ伴奏で出演してくれることになった」

ささみん先輩の隣に、ものすごく不満そうな王子が立っている。


「グッジョぶッ!ささみん!」

「俺は今まで(無駄なので)君に意見をしたことはないけど、これはイイ判断だ!」


男子2名は、女子部員激増の期待に目の色が変わっている。


「心配顔の野上さん。大丈夫だ。王子には“痛(イタ)発言に気付かせて貰った”という貸しがある。拒否権はない」

「うるさいな!」

「言葉を慎んだほうがいいぞ?王子。ファンが減る。そして、合唱部にも拒否権はない」

「……」


合唱部が一体どんな弱みを、ささみん先輩に握られているのか、気の毒すぎて訊けない。

ミレニアムホールでミニコンの打ち合わせと練習があるからと言われた時、

なんで4人しかいないのに、ホールで練習なのかな?

…って、不思議に思ってたんだけど、

その理由がようやく分かった。

とにかく、企画の規模が大きくなっていることに驚く。

吹奏楽部までいる。


王子とは、あれから話をしていない。

避けているわけじゃないけれど、正直、王子を恋愛の対象としてみたことがなかったので、

どういう反応をしていいのか、恋愛初心者の私には、まるでわからない。

結局、グループワークでも、他のメンバーとの会話に終始してしまった。

でも、いつまでも知らんふりという訳にはいかないし…


――本当に、どおしよう…


そうこうしているうちに、ささみん先輩から、歌葉部が考えたミニコンの企画書が配布され、説明が始まる。


「言葉を“音”として捉えることにこだわっている我が部としては、そもそも“歌”自体、 “言葉”と“音楽”の部分として理解する必要がある。“言葉”と“音楽”の境界とは…」


「……え?」

一体何が始まったのかと、
残りの部員全員で、配られたA4の紙を見てみると、

“研究テーマ、背景、その研究意義、目的、対象と方法……”


「…コレ…、なんの研究計画書…??」


ささみん先輩の演説は止まらない。


「したがって、“歌”を歌うという行為をコミュニケーション形態のひとつとして捉え、言葉を音楽、つまりメロディーにのせてだな、その聴取印象と言葉の意味を…」


「「「わあああああ~~~っ!!」」」


まずい!みなさん、ひいていらっしゃる!

これです!

ささみん先輩っ!

これが、新入部員が入ってこない原因ですよっ!!
< 10 / 18 >

この作品をシェア

pagetop