つなげば星座になるように
このままでは、せっかく準備してきたミニコンが失敗しちゃう!

氷点下まで冷え切った空気を、なんとか必死に暖めにかかる。


「あ、あの…、そんなに難しく考えないでください。言葉の持つ意味とか音とかで、遊んでみようって、ただそれだけの話なんです!」

「日本の童謡をタイ語に訳して歌ったり、その逆とか…!」

「これは、ささみん先輩のアイデアなんだけど、“鬼のパンツ”はイタリアの曲でしょ?“はこう、はこう、鬼のパンツ~♪”は“行こう、行こう、火の山へ~♪”なんだけど、逆に、日本語のほうをイタリア語に訳して歌ってみるの!」

「え~と…、“鬼のパンツ”ってイタリア語でなんて言うのかな…」


男子部員に助けを求めるけど、大きく手でバツを作り、必死に首を横に振っている。

もう一人は、ささみん先輩をホールド中。

すると、合唱部の先輩から声が上がった。


「鬼…は“Demone”(デモネ)じゃない?…“Pantaloni da demone”かな」

「さすがです!先輩!」

「あのさ、他の言語でもいいんじゃない?中国語にして歌ってもおもしろいかも」

「いいですね!翻訳お願いできますか?」

「でも中国だと“鬼”は“幽霊”なんだよね。幽霊ってパンツ履くの?」


クスクスと、笑い声が聞こえる。

よかった、興味を持ってもらえたみたい。

もともと、どんな事情があるにしろ、こんな弱小サークルの広報活動に協力しようという奇特な人たちだ。

こうなると、もう話は早い。

吹奏楽部からもコアな会話が聞こえてくる。


「音楽的な部分から言わせてもらえば、同じ言葉を歌っても、メロディが違えば聴取印象が変わるよね」

「変調するってことですか?」

「いや、メロディ自体変える。もともと持ってる歌の言葉とメロディーを切り離す感じ」

「じゃあ、唱歌がいいね。固定のイメージあるもの」

「“ふるさと”のメロディーラインで“チューリップ”を歌う」

「拍数違うじゃん、他の曲は?オペラも面白いんじゃね?」


すごいなぁ~…


感心して聞いていると、ふと、真横から視線を感じた。

いつから見てたんだろう。

譜面を小脇に軽く挟んで、腕を組みながら、

王子が、私を見て微笑んでいる。
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