残念系お嬢様の日常
希乃愛は嬉しそうに言っていたけれど、私にはどうもそれを素直に信じることができなかった。
だって、あの久世が私なんぞに妬く気持ちがあると思う? ないないない。
曖昧に微笑むと希乃愛はお上品に挨拶をして部屋から出て行った。
希乃愛はどうしたらそんな勘違いができるんだろう。久世はどう見たって嫉妬しているようには見えないのに。
けどまあ、ようやく嵐が去った。
「姉さん……それ、どうしたの」
「え?」
蒼の視線の先には先ほど希乃愛とも話をしていた初恋想。
そういえば蒼は本を読むのが好きだから、もしかしたらこれも既に読んでいるかもしれない。
「スミレから借りたのよ。この号だと月光の少女が人気らしいわ」
「俺が書いたやつ」
さらりと蒼がなにか言った気がするけれど、わけがわからず頭を傾けて瞬きを繰り返す。
脳内の情報処理がついていかない。「え、今なんて?」と聞き返してみると、蒼は眉根を寄せながら目を伏せる。
「だから、作者俺だよ。それじゃあ、部屋に戻るね」
「ええ! ちょ、蒼!? 蒼って文芸部だったの!?」
蒼は爆弾を投下して、そそくさと私の部屋から出て行ってしまった。