残念系お嬢様の日常


「屋上、行こっかー。足、大丈夫?」

「……大丈夫」

足が痛いことに気付かれていたみたいだ。

今は児童館にあるスリッパを履いているから、さっきよりも痛みは少ない。擦れて赤くなったところが明日水ぶくれになっていそうで少し怖いけど。


「そっかー。じゃ、ゆっくり階段上がっていこ。屋上っていっても高い建物じゃないから大丈夫だと思う。水谷川さんとかも浴衣で来てたし」

「あの、雨宮!」

部屋を出る直前、雨宮を呼び止めた。

恥ずかしさを押し隠して、きちんと視線を合わせる。



「ありがとう! 大事にする」

まだ言っていなかったお礼を告げると、雨宮は子どもみたいに顔をくしゃっとさせて無邪気に笑った。

ちょっと可愛いとか思ってしまったのは、多分浴衣を着ているだとか、今日は花火大会だとかそういう普段と違う状況のせいだ。



「あれ? 雲類鷲さんちょっと顔赤い? もしかして照れてる?」

「うるはい」

「あはは、噛んでる」


……やっぱ可愛くない。




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