残念系お嬢様の日常
主催者の家の子どもは、今スミレの腕を掴んでいる男の子だ。
今叫んでしまったら、水谷川家に不利益なことが起こってしまうかもしれない。きっとこの男の子は、口が上手い。
さっきだって大人たちの前では完璧な男の子を演じていた。
今みたいに意地悪な顔を全く感じさせず、優しくて気遣いができて、けれど無邪気な子だった。
叫んだところで、都合のいい言い訳をして、周りの子に嘘の証言をさせるだろう。
それくらいわかってる。
そして、彼もスミレがそのことに気づいていることもわかっているんだ。耐えるしかない。我慢すれば終わる。
家に迷惑をかけたくない。ただでさえ、悲しい想いをさせているのに。
『つまんねぇな、なんかしゃべれよ』
話せば笑う癖に、黙ると話せと言ってくる。理不尽で我儘な彼は自分が一番偉いとでも思っているのだろう。
大嫌いだ。消えちゃえ。みんなみんな消えちゃえばいいのに。