残念系お嬢様の日常
「え……」
まさかそんなわけない。と思う気持ちと、久世の発言でもしかしてという気持ちが入り混じる。
けれど、私の言葉を遮るように久世が立ち上がる。
「今までありがとう。真莉亜」
「……私の方こそ、ありがとう。最後に苦労かけてしまってごめんなさい」
「お前は本当甘いな。婚約破棄をしたかったんだろう? なら、そんな顔するな」
久世とは昔から気が合わなくて、婚約なんて絶対に破棄したいと思っていた。
けれど、昔よりは良好な関係を築けて友人のような相手になっていた。
それでも破棄するのなら、甘い考えは捨てよう。
「そうね。それじゃあ、後は頼んだわ」
「ああ。じゃあな」
きっともうこうして二人で会うことはない。
なにか理由がない限りは連絡を取り合うこともなくなるだろう。
私たちは最初から友人ではなかった。
決められた婚約者。その関係を絶てば、なにも残らない。