残念系お嬢様の日常


「え……」

まさかそんなわけない。と思う気持ちと、久世の発言でもしかしてという気持ちが入り混じる。

けれど、私の言葉を遮るように久世が立ち上がる。



「今までありがとう。真莉亜」

「……私の方こそ、ありがとう。最後に苦労かけてしまってごめんなさい」

「お前は本当甘いな。婚約破棄をしたかったんだろう? なら、そんな顔するな」

久世とは昔から気が合わなくて、婚約なんて絶対に破棄したいと思っていた。

けれど、昔よりは良好な関係を築けて友人のような相手になっていた。


それでも破棄するのなら、甘い考えは捨てよう。



「そうね。それじゃあ、後は頼んだわ」

「ああ。じゃあな」

きっともうこうして二人で会うことはない。

なにか理由がない限りは連絡を取り合うこともなくなるだろう。



私たちは最初から友人ではなかった。


決められた婚約者。その関係を絶てば、なにも残らない。





< 586 / 653 >

この作品をシェア

pagetop