雨が降る 黄昏時と夜のこと
「小沼くんのせいじゃないよ」
「ごめん……芹沢」
小学五年生の出来事は、そんなに彼にトラウマを植えつけてしまったのか。小沼くんはあの頃よりもずいぶん成長したけど、面影残る眉を下げ、悲壮感を漂わせる。
窓ガラスに反射して映るそれに、小沼くんの昔と今を重ねた。大丈夫なのだと、昔のことまで拭えはしないけど、振り返り最上級の笑顔を向けた。
「もう、芹沢に迷惑かけないようにする。ていうかさ、もう、迷惑かけたくても出来ないようになるから……だから安心してよ」
「小沼、くん?」
「俺、今度辞令が出るから。転勤の」
大人になった私たちは、子どもの頃とは違う。窓ガラスの向こうは本物の夜で、小学生のあの日では一緒に過ごしているはずのない時刻。
離れてしまう距離は、あの頃の二メートルどころではなく……。
「帰ろっか」
促され、今までそうしたことなんてなかったのに、突然のことに動揺したままの私は、小沼くんと一緒に会社を出た。