雨が降る 黄昏時と夜のこと
「転勤……いつから?」
「三ヶ月後くらい。すぐじゃなくてごめん」
「っ、そうじゃなくてっ」
それ以上何か話すこともなく、電車はもう小沼くんが降りる駅へとスピードを落としていく。やがて完全に停車する。
「じゃあね、芹沢」
昔からきちんと挨拶をしてくれる小沼くんは、そうして今日もそれを欠かずに電車を降りていった。
「……っ、待ってっ」
「芹沢っ!?」
その、欠かされなかったものが、とても大切だと愛おしくなった。
「もうっ、昔みたいに話し掛けられなくなるの嫌だっ」
愛おしくなって。
いや、昔から愛おしくて。きっと。
もう失くしてはいけないものだ。
「だから迷惑とか思わないでよっ。安心してなんて……不安にもなってないし小沼くんだって何も悪くないでしょっ?」
大切な縁が切れてしまえば、今度はもう元には戻らないかもしれない。恐怖に陥り、私は小沼くんと一緒にホームに降り立ち彼の手を掴んでいた。