春雷
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三月二十一日



「かっ飛ばせぇ〜っ!ジャ、ス、ティン!
かっ飛ばせたぇ〜っ!ジャ、ス、ティン!」

「由乃ちゃん、それ野球だよね」

「ドーム参戦という所は同じですね」

ライブツアーに向かう車の中。
由乃ちゃんのテンションはマックスだった。
私の運転に助手席は由乃ちゃん。
後部には高村先生が乗っている。


「打ちましたあー!カキーン!!!」

「打ったんだ」

「おおー、高いですねー」

「ホームランだーーっ!ジャスティンホームランでーす!」

おおーーっ!
あははははははは

三人の笑いが揃うと
なんとも言えない幸福感に満たされた。


今日は朝から楽しみだった。
待ちに待ったレッドイーグルのツアーだ。



「なんか、お二人水入らずのところ、僕も仲間に入れてもらって、すみません」

「な、何言ってるんですか!!このチケット、当選したの、高村先生じゃん!こちらこそありがとうございますですよ!神様ですよ!」

「そうですよ。私たち、全滅でしたもん。高村先生、神さまです」

「そう言ってもらえるなら。でも、アリーナだから、僕が立ってたら後ろの人は見えにくいでしょうね‥」


「たしかに、先生は背が高いよね。銀テープも、サインボールも楽勝じゃん!でも先生、何センチあるんですか?」

「185センチです」

「膝下から貰えませんか?」

「足がそれだけなくなると、あなた達のピンチの時に走って助けにいけないので、厳しいです」

「う、うひゃー!先生、めちゃ良い人!
私も助けてくれるんですかー?!
先生は、そんなんサラッと言える人なんですかっ?!
先生以外にそんな事言われたらめちゃ
怖いけど、高村先生ならうれしい!」

「良い人ですかね?村上先生は、僕のこと、やばい過激な男だと言います」

「村上先生?あ、あの頭も顔もやたらテカテカしてる小さい先生だね!
でも、なんでだろう?」




「さあ、どうしてでしょうねぇ」



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