常盤の娘
「情けない話だが、俺には何も知らされなかった。工場の方にはよく顔を出していたが、工場の人らは誰も俺にそんなことを話さなかった。父さんと母さんは仕事と金の話を家に持ち込まなかった。俺だけ何にも知らなかった」
「……」
「酷え話だが、俺は自分の親の葬式で一滴も涙を絞り出せなかったよ」
「……そ、う、なの」
パタパタと、水滴が慌ただしくカウンターにはねて。もう少し頭拭いといた方がいいんじゃねえの、と隣に目をやったところで、俺は言葉を失った。
純花が泣いていた。
「あれ。何でだろ。何で私が泣いてんだろ」
純花自身も困惑したようで、しきりに手のひらで頬の涙の跡をたどっていた。
「……ね、私もね、兄の葬式では泣けなかったの……なのに、どうしてだろ……ね」
純花は肩にかけたタオルの端を目元に押し当てながら、そう言った。
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