42歳 主婦 旦那様に片思い中【佳作受賞】
そこから、私たちの関係は始まった。

週に数回、食事に行き、毎週末、デートに行った。

喜多見さんは、ルックス的には、決して好みのタイプではなかったが、穏やかな彼の性格は一緒にいてとても居心地が良かった。

1ヶ月後には、私の失恋の噂はどこからともなく広がり、何人かの男性から声を掛けられたが、私は全て断った。

正直、喜多見さんよりカッコいいひとは何人かいた。

気持ちが全く揺れなかった訳じゃない。

でも、喜多見さんより優しくて、喜多見さんより居心地のいい人はいなかった。

多分、この頃から私は、彼に惹かれていたんだと思う。

彼も私に惹かれていたはずだ。

だけど、彼は何も言ってはくれなかった。

元来、内気で大人しい彼だ。

告白なんて事は、苦手なんだと思う。

3ヶ月が過ぎたところで、私は行動に出た。

『喜多見さん、いつも優しいよね。
なんで?』

そんなメールを送った。
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