極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
――翌日。
仕事が終わる予定の時間を環に知らせていた万佑は、待ち合わせに間に合うよう社を出た。
ビル内のエレベーターを待つ間、彼から連絡がないかスマートフォンを確認する。
特に時間変更のメッセージもないので、まっすぐミミの店に向かえば、間違いなく会えるだろう。
彼は多忙だから、少しの遅れやドタキャンなんかは覚悟の上で約束をしたつもりだ。
(この前会った時、気合いを入れ過ぎたかも……)
クライアントと会う予定があったのでパンツスーツ姿だ。遊びを効かせるとしても黒のウールコートに合わせたチェック柄のマフラーくらい。仕事帰りなのだから、この方が浮かないと分かっていても、環に会うにはもうちょっとおしゃれをしたかったと思う。
告白されて、彼をさらに強く意識して過ごすようになってしまったせいだ。
オフィス利用者用の正面入口を出ると、冬の冷たい風で髪が舞う。
「お疲れ様、万佑ちゃん」
「えっ!? どうして?」
「迎えに来たんだ。少しでも早く会いたくて」
凛とした冬の空気を纏った彼は、ネイビーのコートのポケットから手を出し、自然と彼女の手を取った。