極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
今夜は、その手を離そうと思わない。
包み込まれる温もりも、彼に早く会えたことも、万佑は素直に嬉しかった。
「サプライズが好きな万佑ちゃんなら、喜んでくれるかなと思ったんだ。ところで、いつもはどのルートで通勤してるの? 大手町まで歩いて半蔵門線?」
「乗り換えがないのでそうしてます。でも、今夜は寒いし……どうしましょうか?」
「じゃあ、山手線でのんびり渋谷まで行こう」
「はい」
やんわりと、でも決して離さないと気持ちが伝わってくるような手の強さは、なんだか甘えたくなる気持ちにさせられる。
帰宅ラッシュで混雑する東京駅の改札を抜けて、山手線のホームへ上るエスカレーターに乗った。
「今日も忙しかった?」
「っ!!」
後ろに立つ環が話しかけてきたので振り返ると、その近さに息をのみ、返事に間が空いてしまった。
まっすぐな視線が、まるで心の中まで見透かすように突き刺さる。