極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
「昨日万佑ちゃんから誘ってもらえたおかげで、今日も進捗がよかったよ。ありがとうね」
「私は別になにもしてないです」
思いがけなく感謝されて、照れくさい。
伏し目がちに視線を落とすと、しっかりと繋がれたままのふたりの手がある。
(永縞さんは、どういうつもりでこうしてくれているんだろう。この前の告白は、やっぱり本気なのかな……)
恋愛どころか男性にも慣れていない万佑は、電車がホームに入ってきた風で舞う髪を、そっと押さえた。
混み合う車内で、吊革に手を伸ばす。
しかし、あと少しのところで他の乗客に奪われ、万佑は出発した電車の揺れにヒールの足で耐えた。
「万佑ちゃん、大丈夫?」
環に話しかけられて見上げると、隣に立つ彼は周りよりも頭一つ出ている。
「俺につかまって」
「……ありがとうございます」
空いた手で彼の腕につかまったら、一層心がくすぐったくてたまらない。
万佑は、渋谷に着くまでずっと彼の顔を見れなかった。