極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
電車を乗り換え、三軒茶屋駅で降り、ミミの店までは徒歩でおよそ5分。
「いらっしゃーい! どうぞ入って」
店のドアを開けると、野太い声でミミが迎えた。まだ時間が早いのか、先客はいない。
ふたりはコートを脱いで店のハンガーラックに掛け、カウンターに並んで座った。
「ふたり揃って来るなんて、初めてね」
「今夜は万佑ちゃんからのお誘いだから」
「あら、そうなの? 今夜はってことは、もうデートしたことがあるのね」
勘のいいミミは、あまり口を挟まず、キッチンでつまみの用意を始めた。
「永縞さん」
声を潜めて環に話しかける。
「私たちのこと、あまり他の人には言わないでくださいね?」
「ん? 俺たちのことって?」
「だから、その……」
「隠すようなことなんてないでしょ?」
ここまで来る間、散々ドキドキさせられた胸の奥は、未だに落ち着かない。
さらに、今は環がミミにあれこれ話してしまわないかとハラハラするのだ。
ミミには知られても構わないと思う反面、まだ自分でも揺れている心の中を、これ以上かき混ぜられたくもなくて……。