極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
ファーストキスをするような緊張感に、呼吸を忘れた。
夜空の星が瞬くような黒い瞳と、羨むほどの綺麗な肌は、何度でも見惚れてしまう。
思えば、出会ったあの夜も彼はキスをしようとしていた。
失恋したばかりなのに、距離を縮めてくる彼に戸惑いつつも、自分もキスの予感に期待してドキドキしたのを覚えている。
だけど、あの時とは違う。
今はきちんと想いを通わせ、環に愛される女性でいたいと思うようになったのだ。
「目閉じて?」
「あっ……ご、ごめんなさい」
触れられてもいないのに、唇がじんじんと熱い。
彼の瞳が、自分の口元と瞳を往復する度に、ドキドキと鼓動が煽られた。
「ママー! チューしてるー!」
「こら、見ちゃダメよ」
通りすがった親子の声にムードは崩され、ふたりは見つめ合ったままふっと笑った。
「とりあえず、帰ろうか」
「……はい」
手を繋いで、駅の方へと歩き出す環についていく。
まだ帰りたくないと本音を言ったら軽薄と思われないかと、万佑は彼の横顔を見上げながら逡巡した。