極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

「――それだと、きっとクライアントに響かないんじゃないか? ゼロベース思考でやらないと。スウォット分析から見直してみて。特に外部環境の分析が甘いな。じゃあ次の案件」

 金曜の夜や週末の休みも、環は仕事が最優先だ。
 退職するにあたって、新しい案件を受け持つことはやめ、社長職である高成や他のメンバーに振るようにしている。
 だけど、先に進めていた案件を投げ出すわけにいかないので、20時を過ぎて帰宅しても、アサインしたコンサルタントとやりとりしていた。


「うーん……。ちょっとまだキャッチアップが足りてないから、先方のCFOともっと話を詰めておいて。理想だけじゃ上手くいくわけがないって返されるのがオチだ。焦らずにじっくり話を聞く時間を設けるのが先だよ」

 入社3年目のコンサルタントに指示を出しつつ、自分で考えて成果を出してもらえるように育てるのも環の仕事だ。若手を育てるのは大変だけど、やりがいのある業務のひとつでもある。
 連絡を終えて、ソファに大きくもたれた彼は、ようやくネクタイを緩めて息をついた。

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