極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

 退職し、ブルーメゾンの専務取締役に就くことは、まだ公になっていない。
 知っているのは、ブルーメゾンの葛城やFNの高成、うっかり聞かれてしまった秘書の宮前だけ。来月くらいには限られた人間にアナウンスしていく必要も出てきそうだが、万佑には未だに話せずにいる。

 万佑が迂闊に他言することはないだろうけれど、なにかあった時に彼女を守るためにも、こういった話には慎重になる。
 コンサルで勤めていることもあり、あらゆるリスクの先読みをする癖がついているのだった。


「万佑ちゃん、怒ってないかな……」

 仕事を理由に会えないなんてことはしないと、以前彼女に断言した記憶がある。
 もちろん、そうしているつもりはないのだが、現実的に厳しく、結果として会えずじまいだ。

 昼過ぎに送られてきていたメッセージを表示し、文字を選ぶ指先は、彼女に触れたくてたまらなかった。

< 186 / 276 >

この作品をシェア

pagetop