極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
今夜も環がハイボールを作り、ソファに並んで座る。
一緒にいられるときはできるだけ触れていたいと、環は彼女の肩に手を回し、万佑もまた甘えるように寄り添った。
(結婚かぁ……。私も29歳だし、いいタイミングではあると思うけど、まだ仕事をしていたいし、彼のことをもっと知りたいし……)
人生の大きな決断に気乗りしないのではなく、その時がいつなのか見極められずにいる。
いつかは愛する人のお嫁さんになって、生涯添え遂げたいとずっと思ってきた。
10代の頃は、結婚に夢を見ていたから、25歳くらいに嫁ぎたいと漠然とした想像があったけれど、社会人になったら、その歳は仕事が楽しくなる時だった。
だから、社会人になってからの20代は、結婚を軸に考えるのではなく、仕事を軸に充実した毎日を過ごす中で、良き時が訪れるものと構えてきた。
そして、失恋と出会いが同じ夜に訪れ、目の前に幸せがある。
今すぐにその胸に飛び込んで、プロポーズを快諾しても、きっと彼は喜んでくれる。
だけど、それではいつか後悔してしまうような気がしてならないのだ。