極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

「万佑、ちょっと話しておきたいことがあるんだ」

 グラスを置いて、きちんと向き合えるだけの距離を取った環は、改まって座り直した。

(環さんも仕事が多忙だから、きっと会えない時間に私が不安にならないように、気を使ってくれるんだろうな……。本当にどこまで優しい人なんだろう)

 度々プロポーズしてくれていた彼が、また熱い想いを言葉にしてくれるのかもしれないと、万佑も同じように姿勢を正す。


「春が終わるまで、俺たちのことは秘密にって約束したけど、その訳を話そうと思う」
「……うん」
「実は、6月からブルーメゾンで働くことになった。FNのコンサルを辞めて、葛城さんの元で専務に就任する話がある」

 予想の斜め上をいく環の話に、万佑はきょとんとしたまま彼を見つめた。

(ブルーメゾンで、環さんが働く? 専務として?)

 そんな話を社内で耳にしたかと、異動してからの少ない期間の記憶を辿る。
 だけど、どんなに思い返しても、役員が就任するという話題は記憶にない。
 それどころか、環のことは話題になれば、忘れたりするはずもないのだ。

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