極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
「ごめんね、ずっと黙ってて。葛城さんから情報開示の許可が出てからじゃないと、なにかあった時に万佑を守れないと思ったから、言えなかった」
「えっと、あの……本当ですか? 驚かせようとしてるだけではなく?」
「うん。年明けに聞かされた急な話ではあったんだけど、いつかは自分でコンサル会社を興すか、他の企業で働いて経歴と研鑽を積んで、新しい仕事に生かせるようにしたいと考えてたから、葛城さんに声をかけてもらった時はすごく嬉しかったんだ」
「……だから、ここのところ忙しいの?」
「そうだね。仕事の引継ぎもあるし、いろいろと。だけど、ずっと万佑に黙っているのは心苦しかった」
申し訳なさそうに眉尻を下げて、いつもの凛々しさが影を潜めた環の表情は、偽りのなさを感じる。
だけど、どうして年明けに聞かされていたのに交際を望んだのかと、少しずつ心に一点の黒が現れた。
(私、社内恋愛はしたくないのに……)
そんなに頑なにならなくてもいいと思う人もいるだろう。
でも、嫌なものは嫌なのだ。どんな理由であろうと、恋愛ごとで居心地が変わるような職場にはいたくないのが本心だ。