極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
(……って、この人に八つ当たりしてどうするのよ)
勢いで、環に鬱憤をぶつけてしまった。ため息もつけない最低な夜だとしても、自制心をなくしてはいけないのに。
「ごめんなさい。ちょっと言い過ぎました」
「気にしなくていいよ。もし、俺が女の子だったら、きっと同じようにしてただろうしね。それに、初対面でこれだけ話せる関係もなかなかないし、ちょっと嬉しいな」
環はにっこりと微笑むけれど、万佑は申し訳なくて小さく頭を下げた。
すると、環と背中合わせで飲んでいるサラリーマンが、〝3年目の浮気〟を唐突にアカペラで歌い始めた。
世代的にはだいぶ離れているけれど、昭和の名曲は歌い継がれて万佑も聞いたことはある。しかし、今夜はその歌詞が心に刺さりまくって耳をふさぎたい気分だ。
何年目の浮気だろうと、大目に見てくれなんて女を甘く見ているとしか思えない。
同じ時間を過ごしてきたのに、別れたらこっちは失うものばっかりで、向こうはもう次がいる。
本当に悪いと思っているなら、そんなことは言えないはず。なにをしても愛してもらえる、許されるなんて考えが、そもそも間違いだ。