極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
(それに、万佑ちゃんに近付くチャンスが増えるかもしれないよな……)
週末、デートに誘った彼女はグループ企業の社員なので、この話を打ち明けるわけにはいかないが、自分がブルーメゾンの専務として勤めるようになったら、どれほど驚いた顔をするのか見てみたい気もする。
3時間ほど経ってから立花の店を出た。
土曜の夜、19時に2名で予約を入れさせてもらい、帰りに万佑に待ち合わせできそうな時間を教えてほしいとメッセージで送っておく。
信号待ちの間、背後にあるブルーメゾンビルディングを見上げる。
都心の一等地に自社ビルを持って経営している企業は、そう多くない。ブルーメゾンからの相談を受けつつも、今後の発展を考えるとクライアントのことながら、ワクワクさせられた記憶は新しい。
いずれはFNを辞めて、他の企業に転職するか、自分でコンサルティング会社を立ち上げるか、そんな計画を立てていた。
ただ現状は持ち込まれる案件や、人脈をさらに広げるのに忙しく、その準備段階にあると思っていたが……。
「……ブルーメゾンの専務か。悪くないけど、急だなぁ」
環は、ひとまず帰宅しようと決め、駅構内へ急ぐ人波に紛れた。