極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
「手、繋ぐ? 冷えてるでしょ?」
「だっ、大丈夫ですっ! ポケットに入れて歩くので」
差し出された大きな手に戸惑う。
繋いだらそれこそ恋人同士みたいだし、会社が目の前なので、万が一知っている社員に見られたら噂になりそうだ。
「いいから、ほら」
「っ!!」
キュッと握られた手が、じんわりと温められていく。
繋がれた手を見るのも恥ずかしいし、彼を見ることもできなくて、万佑は正面にある自社ビルを見上げる。
すると、突然環が顔を覗き込んできて、綺麗に微笑みかけてきた。
「ね? あったかいでしょ?」
「……永縞さんの手が冷たくなっちゃいますよ?」
「俺、体温高めだからこれくらいじゃ冷えないんだよ。今日は万佑ちゃんを温めてあげるね」
(またそういうことをサラッと言うんだから……)
待ち合わせからドキドキさせられてしまって忘れていたけれど、これはデートではなくレクチャーだったと思い出し、万佑は環を見上げた。