極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
ブルーメゾンビルディングの館内に入り、3階までエスカレーターで上がる。
一角にある立花の前には、既に来店客の姿があり、〝本日ご予約のみ〟の札があった。
「ここ、来たことある?」
「ないです。いつも混んでて、なかなか入れないんですよ。永縞さんは?」
「俺もないよ。万佑ちゃんがどこなら喜んでくれるかなって、下調べをした程度」
「私と行く場所なんて気を使わなくていいですよ?」
「そうはいかないよ。だって、贅沢な店はダメなんでしょ? かといって、全く色気のない店に連れて行きたくもないしさ」
(私が言ったこと、本当に実践しようとしてるんだ……)
環が恋愛と真剣に向き合っているのだと気づかされた万佑は、さっきまでの甘い言葉もおそらくそうなのだろうと思い直した。
真に受けてドキドキしたり、緊張して指先まで冷たくしたりするなんてどうかしてる。
(……勘違いだ、本当に)
そう思うと、特別な感情を抱いているわけじゃないはずなのに切なくて、胸の奥が少し苦しくなった。