極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

 お互い、無言でいても居心地のいい時間の流れに身を任せる。
 環は、万佑が時折目を合わせてくるたびに、表情には出さないものの恋を自覚していた。

 ブルーメゾンで働くかどうかは、未だ自分でも答えに迷っている話だが、万佑のことを思うと想像しただけで頬が緩んでしまう。彼女と近くで過ごせるのは、仕事のモチベーションに直結するに違いない。
 それまでに、どうにかして万佑を振り向かせなくてはと、改めて初デートに気合が入る。


「やっぱり評判のいいお店だけあって、どれも美味しいですね。雰囲気もいいし」
「気に入ってくれたみたいでよかった。また来ようね」
「……はい」

 彼はなんの気なしに言っているのだろうし、求められているのはレクチャーなのだと分かっていても、どうしてもドキッとさせられてしまう。
 自分が新しい恋を見つけたら、この役回りも終わりにしていいと言ってくれていたし、彼だって次の恋を探しているようだから、これ以上関係が進展するなんてあり得ないはずなのに。

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