同期以上、彼氏未満
昴の住んでるマンションに着くと、エントランスの前で昴が立っていた。


「あれ、わざわざ迎えに来てくれたの?」


「コンビニ行ったついでや。


コーヒー飲んで、一息ついてから帰ればええんちゃう?」


「うん、そうさせてもらう」


昴の部屋は、引っ越しを手伝った時とあまり変わっていなかった。


「あ、これお母さんから、筑前煮だって」


「ほんまに?


俺、筑前煮めっちゃ好きやねん、なんで知ってるん?」


「そんなの、たまたまでしょ」


「おおきに」


昴は、冷蔵庫にタッパーをしまった。


チラ見したら、冷蔵庫はほとんど空っぽだった。


「お待たせ」


「ありがと」


コーヒーのいい香りが、部屋中に広がった。


テーブルで向かい合って、しばらくしゃべりながらコーヒーを飲んだ。


「あれ・・・雨降ってきたで」


「ほんとに?


もう、自転車なのに」


ふたりで席を立ち、窓際に移動した。


「まあ、夕立やろ。


小一時間でやむんちゃうかな」


「じゃあ、資料を読みながら雨宿りさせてもらおっかな」


「俺はかまへんで」


テーブルに戻ろうとした瞬間、ものすごい大きな音の雷が鳴った。


「うわー、今のけっこう近かったね」


「さっきから、遠くの方で光ってたからな」


昴は、テーブルの窓が見える椅子に座っていたから、外の様子が見えていたんだと思う。


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