同期以上、彼氏未満
「悪い、ちょっと責めすぎたわ。


俺の、長い片想いはまだ続くんやなー」


半分ヤケになってるような昴の一人言を聞きながら、私の裕和への気持ちがわからなくなった。


防波堤をのんびり歩いていく昴の後ろ姿を見送りながら、自分のふがいなさが情けなかった。


「いつまでたそがれてる気や、行くで?」


振り返った昴の笑顔は、本当にまぶしくて、そのままついていきたい衝動にかられた。


昴と手をつないで、並んで歩けたら。


そんな想像をかき消すように深呼吸をひとつすると、


「ひどーい、置いてくつもり?」


精一杯の笑顔をつくり、昴のあとに続いた。


よく3人でドライブした海岸沿い。


ソフトクリームばっかり食べてた道の駅。


思い出話は尽きることがなくて、仕事を忘れて楽しんだ。


車を置きにホテルへ戻り、タクシーでよく行ってた居酒屋へ向かった。


「お兄さん、とりあえず中生ふたつね」


「はいよ!・・・って、あれ、お客さんたち、昔よく来てませんでした?」


「7年前、この近くの工場で働いてたんです。


出張で久しぶりに来て、本当に懐かしくて」


「いやー、嬉しいです。


あっ、すいません、ビールすぐお持ちしますね」


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