同期以上、彼氏未満
「昴と一緒だと、本当に楽しいよ。


だけど、それは仲のいい同期だからでしょ?」


これ以上深入りしたら、人としてダメだ。


私は必死でハンドルを握りしめ、急ブレーキをかけた。


「俺は、メグのこと、ただの同期だなんて思えへんねん。


俺だけのメグになってほしいんや」


ザラザラした防波堤の感触だけだった私の右手に、昴の左手が重なった。


昴の手は、こんなに優しかったかな。


そして、裕和にもらった指輪が、まるで邪魔をするように昴の左手に突き刺さる。


ザラザラとふわふわに挟まれて、身動きできない。


右隣に座っている昴を見上げると、視線が交わった。


「俺、メグが決心するまで、待ってるからな」


昴は、私の頭をなでたかと思うと、おでこにチュッとキスをした。


「メグが好きや」


昴のまっすぐな言葉は、私の心の奥底のなにかを揺さぶってゆく。


「メグ、なんか言えや」


「あ、えーっと・・・」


「そやな、『私も昴が好き!』とか、おすすめやで?」


「言うわけないじゃん!」


「なんや、ケチ」


「だいたいさー、私は昴のこと同期としか思ってないって言ったじゃん」


「ほな、メグは誰が好きなん?


本音をぶつけてくれや、俺も告白したんやし」


「それは・・・」


「海に向かって『裕和が好きー!』って、叫べや。


そしたら俺も、あきらめられるかもしれんわ」


「私は・・・」


「裕和が好き、やろ?


指輪してんねんもんな、当たり前やわ」


< 53 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop