先輩の彼女にしてもらいました
一緒に走ったこともあるから、彼女の足が速いのはわかっていたけれどそこまでとは、思わなかった。

N高校に、編入の話があると聞かされた時は、さすがにショックだった。

彼女達の言うように俺は蒼井さんのことを、なんにも知らないんだ。

普段から彼女自身のことを聞いてもあまり、話したがらなかった。俺は無理には聞こうとは しなかった。いつか話してくれたらいいと、思っていたから。

だけど、いつかなんてそんな日は待っているだけでくるのだろうか。

そもそも、彼女が俺に大切なことを打ち明けてくれるほど、心を開いてくれることはないのかもしれない。

彼女にとって俺は、尊敬とか、目標とか、そんな眼差しで見られている。

結局それは、遠い存在にしか思われていないということのように思える。

俺だって、彼女達の話を100パーセント、信じたわけじゃない。

蒼井さんが、全部嘘だと否定したんだから、出来れば自分の恋人の言い分を信じてあげたい。

俺だって、信じたいのに。

だけど、心の片隅に何かが引っかかっていたのも事実だった。
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