はつ恋の君をさがしてる
「おい!そんなさみーとこで何してんだ?」
「ふへぇ?」

ベランダでぼーっと空を眺めながら考え事をしている間に、居なかったはずの高嶺さんが戻ってきていたらしい……

まったく気が付かなかった……。

「何って洗濯物を干してましたけど?」
「ばか!お前ここが何階か分かってないのか?このマンションは外に洗濯干すの禁止だぞ?」
「え?え~!ウソ……。もしかして布団もダメ?」
「当たり前だろう……布団なんか干して吹っ飛んだら死人が出るぞ?」

あ……。そうか。
それは思い当たらなかった……。

ズーンと落ち込み凹んだ私は仕方なく干したばかりの洗濯物をノロノロと回収して乾燥機にかけたのだった……。

「そっか!だから乾燥機があるんだ!」
「今さらかよ……」

心底呆れたように言われてますますへこむ。
だって…アパートじゃ誰にも怒られなかったし。
こんなすごいマンションに住んだことないし……

どんどん下降していく気持ちに引きずられて思わずリビングの隅に座り込む。
窓の外は相変わらずの晴天。
なのに干しちゃダメなのかぁ~
ガックリだよ。

そんな私に苦笑いしながら高嶺さんがコーヒーを淹れてくれる。
リビングがコーヒーの香りで満たされていく。
ほどなくして差し出されたマグカップに口をつけながらまたぼーっと空を眺めた。
そのすぐ隣に高嶺さんも座る。
そして同じようにコーヒーを飲みながら空を見上げる高嶺さん。

座ってもこれだけ身長差があるんだなぁ~
きっと見えてる景色も違うんだろうなぁ。

空を眺めていたはずの視線が、気付くと高嶺さんの横顔に釘付けになっている。
固そうに見える真っ黒な髪は触るとやわらかかったりするんだよなぁ……
キツそうに見える目許も笑うとくしゃっとなって可愛いし、口は悪いけど優しいんだよね?
それから?そうそう!かなり心配性だよ!
もはや心配性通り越して過保護だし!

高嶺さんの横顔を眺めながら、さらに高嶺さんの素敵な点探しをしてみる。

お医者さんしてる高嶺は……不思議だけど、あんまり怖くないかも?
高嶺さんがたまに淹れてくれるコーヒーはすごくおいしくてレア♪
あとは……?

「う~ん。まだまだ分からない未知の領域がありそうだなぁ?」

ついつい溢れた心の呟きを声に出してしまって慌てる。

「何が未知の領域?お前って本当に突拍子も無いこと呟くよなぁ?まぁ面白いからいいんだが。」

高嶺さんにそう言われてちょっと焦ったが、高嶺さんはそれ以上は追及してこな
かった。
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