眩しさの中、最初で最後の恋をした。

見やすいようにと移動すれば、既にグラウンドの競技するそばには女子が大勢いる。

そして、たくさんの声が飛んでいる!

「きゃー、松島先輩!頑張って!」
「水木先輩、負けないで!」

女子達の黄色い声が、そこかしこから上がってくる。
主に下級生の女子だ。
同学年の子達は慣れもあり落ち着いているし、蒼くんには彼女の日菜子が居るのがデフォになったのでそう騒がれない。

要くんについても同じ。
騒がれるのが苦手なのはみんな知っているし、うちの学年は何人か既にふたりに撃沈した話は有名になっているのでそう騒がないのだ。

それに三年生にもなれば、各々相手がいたり、受験勉強に集中したりとそう恋愛にキャーとか言わなくなったみたい。

大人になるってこういうこと?
なんて、ちょっと思ってみたりする。
思考に意識を飛ばしているうちに、まずは蒼くんの走る順番が来た。

「位置について、よーい」
パーン!
陸上用のピストルの音がすると、一気に駆け出す集団。
そこから一歩先に出たのは蒼くん。
そのままぐんぐんとスピードを上げて、一着でゴール。
全力疾走だと思ったのに、蒼くんはあまり息を乱していない。
にこやかに二着でゴールした陸上部の子と話している。

最終走者の組で要くんが出てきた。
並んでるのはどの子も運動部、しかも下の学年の現役の子達。
私はキュッと手を握って見守った。


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