雨夜の星に、願いひとつ
「マジっすか? どんな夢?」
照れくささを隠したような軽い口調になる彼を見て、わたしの中の“もしかして”はひとつ確信に近づいていく。
「んー、なんかねえ、柴ちゃんが肉まんのタトゥー入れる夢」
「ぶはっ。意味わからんし」
そしてきっと今、彼の中にも“もしかして”が生まれたはずだ。
バカなことをしている、という自覚はあった。
だけど同時に、それを認めない自分もいた。
こんなの別にたいした意味はない。単なるバイト仲間として仲良くしてるだけ。普通のことだ。意識するほどのことじゃない……。
「あ、そうだ。相沢さんの連絡先、教えてもらっていいですか」
「うん、いいよ。バイト終わったら交換しよ」
芽生えた感情を隠して、何食わぬ顔で距離を縮めて。
枯れるべきはずの小さなつぼみに、浅はかな衝動で水を与えようとしている。
この先に咲く花は、いったいどんな不穏な色をしているんだろう。