雨夜の星に、願いひとつ
翌日はわたしのバイトが休みで、柴ちゃんと顔を合わさずに過ごした。
わたしは朝から家中を掃除し、しばらく洗っていなかったカーテンやクッションカバーも洗濯した。
それから自転車に乗って、近所のスーパーで買い出し。食材やら日用品やらお酒やら。
買い物を終えると、クリーニングに出していた賢二郎のスーツを受け取って、玄関とリビングに飾るお花も新しいものに替えた。
そんな感じでバタバタと動いていたら、あっという間に空が暗くなっていた。
「もうこんな時間か」
ふう、と一息ついてリビングの電気をつける。
今日一日、わざと忙しく過ごしたのは、よけいなことを考えないためだ。
自分の意志とは無関係に湧き上がる思考は、たいていロクなことがないから。
『相沢さんは年下だめですか』
ちょっとでも気を抜けば、昨日の柴ちゃんが脳裏によみがえってしまう。
張りつめた表情、迫るような声、一瞬だけ垣間見えた、男の顔。
思い出すたびにチリチリと小さな火が胸に灯り、わたしは頑なにそれを打ち消した。
彼はただのバイト仲間。あの言葉に深い意味はないし、わたしも何も期待してない。期待なんかするわけがない……。