初恋の君と、最後の恋を。
彼の気配を近くに感じた。
「つまり、婚約者のことも好きだけど、俺のことも好きってこと?」
近くから響く声に横を向くと、制服が汚れるというのに黒瀬先輩は地面にあぐらをかいていた。
でこぼこの土の上に腰を下ろした彼は空を見て言った。
「君が俺に好きだと言いつつも、付き合うことを求めない理由が、分かった気がするよ」
「先輩…」
「話して楽になるのなら、聞くよ。君が好きな男ではなく、友人として話を聞こうか?その方が気軽に話せるでしょ」
そうだ。
私が好きな黒瀬先輩はこういう人だ。
そっと心に寄り添い、優しさと勇気を分けてくれる人なのだ。
中庭で初めて会った時から、そうだったね。