初恋の君と、最後の恋を。
ん?
しかし黒瀬先輩は自転車に乗ることなくそのままハンドルを持って押し始めた。
「乗らないんですか?」
「自転車の2人乗りって罰金の対象なんだよ」
少女漫画のような2人乗りのシーンは胸キュンだし、ちょっと期待していたんだけどな。
ギュッと背中に抱き付いて、追い風に押されるように髪をなびかせてーー青春っぽいことしたかったな。
「自転車はどうされたんですか?」
「希人の部活仲間に借りたよ」
「わざわざありがとうございます」
雅美と一緒に帰るなどという嘘を見透かし、先回りしてくれたんだ。
「黒瀬先輩、大好きです」
「ありがとう」
その返事に心から安堵した。
ああ、やっと。いつも通りだ。