初恋の君と、最後の恋を。
雅美に電話をしようと思ったが彼女もお店の開店準備や料理の仕込みがある。
自分で招いたことだからね。
代わりに仁くんからの先日のことを謝るメールが届いていた。
お店側には謝ったら許してもらえたけれど、代わりに夏休みにアルバイトをすることになった。割ってしまったマグカップ分の働きはしないとね。
ゆっくりと校門をくぐる。
「雅美ちゃんは?」
校門の前で自転車にまたがった黒瀬先輩がいた。
「……」
「そんなことだろうとは思ったよ。乗って」
今度は自転車の荷台に乗るよう誘われる。
はぁ…優しくされればされる程に、好きになるって分かってくれないかな。
「言ったでしょ。俺のせいでもあるかな」
「それは違う。黒瀬先輩はなにも悪くないよ」
「それを言うなら君も悪くないでしょ」
「でも」
「いいから乗れ」
強めの口調で指示される。
また私のために心を鬼にしてくれている。
優しすぎるよ、あなたは。
黒瀬先輩に支えられて、大人しく荷台に乗った。