初恋の君と、最後の恋を。
本心では、
黒瀬先輩の口から発する、
サヨナラの言葉を聞きたくない。
耳塞いでしまいたい。
でも逃げたらーーダメだよね。
固い机に頭を擦り寄せて、黒瀬先輩の言葉を待つ。
「君はーー」
逃げるな。
きちんと向き合おう。
今更聞きたくないなんて、弱虫な自分に呆れるよ。
「君は、俺に"好き"と伝えてくれたから、"ありがとう"と返した」
「うん」
顔は上げられない。
「だからそれ以上の答えは返せない」
え?
「辛辣な言葉だっけ?君は好き以上の言葉を言わないくせに、俺に何を返せと言うの?」
その声は、少しの苛立ちを含んでいた。
いつも聞いている柔らかなそれではなく、彼の感情が混じった声色だった。