初恋の君と、最後の恋を。


翌日、私は2年生の教室に乗り込み、迷わず黒瀬先輩から地理の教科書を借りた。


それからも顔を合わせれば雑談をして、いつの間にか好きなっていた。



「懐かしいね」


コーヒーのお代わりを注文しながら、黒瀬先輩は苦笑した。


「黒瀬先輩があの日、声を掛けてくれなかったら私ーー聖可高校をやめていたと思います」


「いいや。君は踏み留まっていたよ、自身の力で」


そうやって先輩は私をかいかぶる。


「私が黒瀬先輩のことを好きになった理由はーー上手く言えないけれど、黒瀬先輩の隣りでなら、ずっと笑っていられるような気がしたから。こんな私でも強く生きられる気がしたから」


「……」


雅美と友達になった時、たくさん助けてもらった分、生涯をかけて雅美を守ると誓った。

先輩を好きだと気付いた時、この人のためならなんでもしようと思った。


なにより、


「黒瀬先輩の隣りにいる自分が、1番好きだから」



ふぅと息を吐く。



「黒瀬良斗さん、あなたが好きです」



あの時と同じ、全てを見透かしているような綺麗な瞳に吸い込まれそうなる。




「だからーー私をフッて」





たくさんのことから逃げてきた。


でも、あなたからは絶対に逃げないと決めたから。


きちんと終わりにする勇気を出せた。



「できれば、未練も残らないほどの辛辣な言葉で、私をフッてください」


机の上に額をつけて、目を閉じる。


< 60 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop