ワケありヤクザと鈍感少女
(・・・やめて!)

私はネックレスをスカートのポケットに入れ、

ナイフをふりかざす取り巻きらしき男を

地面に叩きつける。

「・・・喧嘩は素手でやるもんでしょ」

うろたえる男に向かってそう言う。

「沙綾、お前・・・」

驚いたような響也さんの声を背中で聞く。

「・・・てめぇ、女の分際で」

殴りかかってくる5人程の取り巻きらしき男たちを交わし、

背中に蹴りを入れる。

「…女1人に対して何人で来てんのよ。」

そう言うと、男達は背中をさすりながら

「・・・今日のところは勘弁してやる。

おい。い、いくぞ。」

ボスらしき男がそう言い、その場を逃げるようにして去る。

「あー怖かった…

でも、久しぶりにやるとやっぱダメだなぁ」

私は自分の腕の衰えに軽くショックを受けた。



「・・・お前、柔道でもやってるのか?」

「・・・あ、はい。

じゃなくて、うん。

正式にはやって"た"、だけどね。


祖父が柔道の師範で・・・

6年間くらいだけど、教えて貰ってて・・・。


・・・役に立って良かった。」

私は、3歳から1年前まで柔道の師範でもある祖父に柔道の技をみっちりと叩き込まれていた。

投技はもちろん、その他にも数々の技を教えこまれた。

(…こんなとこで役に立つとは思わなかった。)

そんなことを考えていると、

「・・・強いね、君。かっこよすぎない?」

「…見事でしたね。」

外から、2人の男性が拍手をしながらやって来る。

「・・・やっと来たか。神楽坂、竜騎。」

「・・・申し訳ありません。竜騎がノロマで。」

「・・・お、俺のせいじゃないって!」



「怪我はこいつのおかげで、大丈夫だ。


・・・お前のこと見くびってたよ。」



「えっと…お2人はどちら様ですか?」

神楽坂と竜騎と呼ばれた2人の男性と目が合う。
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