今夜、シンデレラを奪いに 番外編
「はい、毎日の体温と合わせてご連絡するそうです。真嶋さまは風水の先生とか、あるいは秘められた霊的な力をお持ちの方ですか?」


「どうだろ」と力の抜けた返事をしながら、高柳さんは夏雪の連絡先を忌々しげにゴミ箱に捨てた。


「あ、捨てたらダメですよ。アドバイス通りにして次こそ素敵な名前を考えてみせますから!」




「名前!?」

と思ったのは声に出てたようで、高柳さんは「君も誤解してるのか」とため息をついた。頭に手をあてて髪をぐしゃぐしゃっとしてる。



…………その後高柳さんが分かりやすく教えてくれたのは、理緒さんが将来の子どもの名付けにハマっていて毎晩話し合いをしているということだった。




「理緒は仕事の合間に思い付くみたいで、メッセージで送ってくれる名前が和むんだ。」


「でも宗一郎さんはいつも却下しますよね!」


「うん。だんじり丸とか、だいもんじとか次から次へとよく思い付くなって感心してる。でも却下。」


高柳だんじり丸
高柳だいもんじ


キラキラネームという範囲すら軽く飛び越えた独創的ネーム。「高柳」という格好いい苗字も名前のインパクトに打ち消されてる。




っていうか、名前を考える話だったんだ…………。


高柳さんと理緒さんは一体会社のドコで、とか色々と妄想してたのを頭から追い払う。

すみません、理緒さんと高柳さん。でも誤解っていうかあれは誰でもそう聞こえると思うけどなぁ。





理緒さんが「着替えてきます」と席を外すと高柳さんは恨めしげに夏雪を睨む。


「理緒のことを妊娠させようとするのやめてくれるかな」


「…………いえ、していません。そのような恐ろしいことを言わないでください。」



高柳さんの言葉にびっくりしてお茶を喉にひっかけた。理緒さんに続いて高柳さんにまで天然ボケ発言をされるとは思わなかった。
< 9 / 25 >

この作品をシェア

pagetop